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ほんとに雑記帳です。
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去年の夏頃からただでさえ高くなっていた原油が狂ったように値上がりし、今年7月11日に147.27ドル(WTI期近物)をつけ、8月22日のニューヨークマーカンタイル取引所で1バレルが114.59ドルまで下落した。


この間、圧倒的に多数のメディアが原油価格の上昇を投機マネーのせいにしていた。そればかりか、経済産業省の北畑隆生 事務次官(当時)までもが投機マネーをやり玉に挙げていた。


しかし、ようやく最近になって識者や日本政府に関係した組織でも原油高騰を投機マネーのせいにせずにもっと深刻な石油の需要の急増とさらなる急増の見込みや、石油資源の枯渇の恐れが原因であると考える人々が出てきはじめた。


私もそう思っている一人なので、ここでは投機マネーは原油価格高騰の原因ではないと主張することにする。当然ながら、私も消費者の一人であり、物価が高騰することはうれしくない。投機マネーをやり玉にすれば、ストレスは少しは発散されるであろうとは思う。だが、我々が投機マネーを叩いて感情的になっている間にも、日本はどんどん苦しい立場へと落ちていく危険性がある。(もちろん、本当に投機マネーが原因ならばいくら叩いてもいいと思う。)


人間は感情的な生き物ではあるから、感情的になるなというのは無茶な話だが、しかし、判断だけは感情的になってはいけないと思う。感情的な判断は圧倒的に間違っている場合が多く、現実を認めないという態度をとっているうちにどんどん事態が悪くなるからだ。


かつて、バブルが崩壊して住専(住宅専門金融会社)に公的資金を供給するかどうかの問題で多くの人々が銀行を悪者にして猛反対した。国民が一方的な貸し手責任を主張している間に事態がどんどん悪くなり(銀行がひどいことをしてきたのは事実であろうがお金を返さない人がいちばん悪いのにそれは一切無視された)、その災厄は当然のように国民全体に蔓延していったのである。感情的な判断で行ったことが結局、自分たち自身を苦しめ続けたのである。


しかし、最近の日本国民は、全体としては(私も含めて)相当理性的であるとは思う。たとえば、日本の規模と比べると小さくなるが、大阪府のように橋下徹知事が大幅な歳出削減に舵を切っても(直ちに府民への行政サービスの減少を意味し、府民に痛みを伴うことが明らかにもかかわらず)、橋下知事を圧倒的多数の方が支持し続けているのである。


今は、あまりの原油の急騰にみんな驚いているのだろうが、いずれは冷静にはなると思う。しかし、それに要する時間がかかればかかるほど、日本は苦しい状況になると思う。


今、主張されている説は、すべて本当に「頭のいい国ニッポン」なのか?と思うような感情的なものばかりである。


(1)「ゴールドマン・サックスが予想したから原油があがった」のウソ


こういう短絡的なことを言う人の代表格はもちろん、北畑隆生 経産事務次官(当時)である。しかし、これには暗黙の前提がある。ゴールドマン・サックスが何かの予想をしたら、周りのみんながそれを信じてゴールドマン・サックスの予想に沿うように行動するという構図ができあがっていなくてはならない。


ところが、今までゴールドマン・サックスの予想のせいで大きな影響が出た、という話は全然あがってきていない。たしかに石油が1バレルいくらになる、という予想を出して当てたことはある。しかし、上に書いた構図ができあがっているのならば、ゴールドマン・サックスはどんどんいろいろな商品の値段を予想してブチあげていれば、もっともっとボロ儲けしていたはずである。なぜ、彼らはそうしなかったのだろうか?この説は、要するにそういうことをしてこなかったゴールドマン・サックスは馬鹿だと言っているのである。


確かに、実際に投資銀行や、証券会社の格付けを発表する。しかし、そのレイティングは種々さまざまである。ゴールドマン・サックスは、たしかに「世界最強の投資銀行」と言われているようだが、他にも、モルガン・スタンレーやメリルリンチがあり、ゴールドマン・サックスだけがすごいのではない。アメリカだけでなく、ヨーロッパにも有力なところは複数ある。今までも証券会社が予想を外すこともたくさんあった。昔のブッラクマンデー(1987年10月19日の株価暴落)のせいでメリルリンチの支店長は銃殺までされているのである。なぜ、突然、彼らが原油価格の上昇をあおったことが原因と言われねばならないのだろうか?みんなが信じなくてはならない筋合いなど全くないのである。


(2)「サブプライムローン破綻で投機マネーが石油を買った」のウソ


よくいわれるのが、これだ。サブプライムローンの破綻で株式市場が暴落したから、投機マネーが原油に向かったというものだ。自分が何を言っているのかわかっているのだろうか。サブプライムの破綻とはバブル崩壊だ、はっきり言って。アメリカの景気は悪くなっていくのである。だから、株式市場も下落した。これから不景気になるとは、需要が減るということだ。なぜ投機マネーが原油の買い占めをおこなうのだろう。


これは素人的発想だ。プロは、買いから入るばかりではない。売りから入ることもあるのである。マスコミは、サブプライムローン問題をアメリカの不動産バブル崩壊だと言っておきながら、原油の上昇はなぜか投機マネーのせいにしたのである。景気が悪くなるのになぜ、原油の上昇を見込むのか?景気が悪くなればみんなが石油を消費したくなると言っているのである。


投機マネーは上がろうが下がろうが変化があればそれでいいのだ。サブプライムローン問題が起きたら、株式市場から逃避するのではなく、積極的に株式市場で売りに回ればいいのである。実際、ニューヨークのダウは、2007年7月末で13210ドル、2008年7月末で113700ドルをつけている。この間の最高値は、2007年の10月11日の142700ドルである。最高値から20.3パーセントも下落しているのである。これを利用しない手はなかったろう。


この間の原油上昇の理由は、ドル安である。原油はドル建て表示のWTIの値段が変化しなかったら、ドル建て分、当然減価してしまうことになる。だからあがったのである。さらに、アメリカ以外の国々では外貨準備のドルの比率を下げるという報道が複数なされた。これは将来的なドル安要因だ。投機筋が存在していなくったって、みんなさらにドルが安くならないうちにパニックになって原油の先物を買っておくだろう。


原油が、急落したのも、EUの景気後退懸念でドル安からドル高に転換したからである。ドル円だって、100円どころか,90円もあり得ると思われていたのだ。それに歯止めがかかり、110円も視野に入っている。


アメリカ大統領選挙の民主党候補オバマ氏が、原油の価格対策としてドル高政策を提唱していたのもこのためである。


また、投機筋の原油ポジションは、2007年中頃に10万枚超の買い越しになってはいるが、その後も増減を繰り返し、現在は売り越しになっていると思われる。(米商品先物取引委員会(CFTC)のデータより)


(3)「投機マネーが買い占めている」のウソ


一番ひどいのがこれだ。日本人的発想である。日本人は昔から、「士農工商」といって商売を馬鹿にしてきた。いい物を作れば(自動的に)売れる、いいサービスを提供すれば(自動的に)売れると未だに思いこんでいる人たちがいる。


しかし、利益を得るとはそんなに簡単ではない。利益は現金を回収しない限りあくまでも評価益にすぎないのだ。実需筋は、原油を買っても消費してしまうから、継続的に買い圧力となるのは確かだが、投機マネーは、原油を消費しない。いつか売り切らないといけないのである。彼らが買えば買うほど、将来の売り圧力が強くなるのだ。これを単純に市場でさばこうとしても簡単にはいかない。評価益を現実化することなんかできっこないのである。


もし、投機マネーが買い占めているのならば、原油の在庫はどんどん積み上がっているはずだ。決定的な証拠を出そう。たしかに、2004年からの在庫は、増加と減少を繰り返しながらも概ね上がっていた。ところが、2007年の7月に約350万バレルを記録した後、減少傾向に転じ、2008年7月でだいたい290万バレルに減少しているのである。これは、過去5年で一番低かった2004年7月(同月比)の水準も下回っている。みんなが、原油の上昇を投機マネーのせいにするのが正しいなら、この間、原油在庫は積み上がっていたはずだ。しかし、この間に原油の在庫は実際に減少しているのである。


このデータ自体の出所は米国エネルギー情報局(EIA)だが、私は、以上のデータを三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部様の8月18日付けの原油レポートNo.133で知った。HPで公開されているから誰でも入手可能だ。ナンバーがふってあるからわかると思うが、この会社は以前から原油価格のウォッチをしているのである。


したがって、(2)のCFTCの統計にはループホールがあると言われているが、仮に、投機マネーが買い越していても、原油の上昇を投機マネーにするのは確実にウソである。


そもそも、90年代はじめに湾岸戦争が終結した後、2000年くらいまで、原油はずっと安かった。しかも、90年代は、イラクが経済制裁のあおりを受けて、人道的要求に見合うだけの原油しか輸出できなかったのにだ。1バレル20ドルを下回るような時代がずっと続いて、産油国もオイルメジャーも青息吐息だった。オイルメジャーも恐ろしいほどのリストラを敢行したのだ。


よく言われるように、原油に占めるWTIは割合がとても小さいから、原油価格をつり上げることは簡単にできると脳天気なことを言う人がいるが、もしそんなに簡単にできるのならば、なぜ、巨大企業であるオイルメジャーは結束してWTIを買い支えしなかったのだろうか?なぜ、アラブの産油国の人たちは、WTIを買い支えして、自分たちの原油の値段をつり上げて売らなかったのだろう?投機マネーにはヨーロッパの金融機関経由でオイルマネーが大量になだれ込んでいると考えられている。おかしいと思わないのだろうか。


原油に占めるWTIは割合がとても小さいから、原油価格をつり上げることは簡単にできると考える人たちが言うように、そんなに簡単なら、メジャー各社やアラブの方々はそんな簡単なことも思いつかないし、やらないのだから馬鹿だと見下しているのだ。


それと、もうひとつ書いておきたいのは、商品相場にはずっと昔から投機マネーがたくさん存在しているのということだ。


ずっと昔の本で、オイルメジャーを遥に上回る力を持つと言われる穀物メジャーについて書いた石川博友「穀物メジャー」(岩波書店、1981年)がある。この人は、「週刊ダイヤモンド」誌主幹を経て、神奈川大学教授(1981年当時)だった方だ。


この本によると、


「アメリカ商品先物取引委員会(CFTC)の調査によると、先物商品取引高は、一九七○年の一四五○億ドルから、一九八○年には五兆ドル近くに増大したとみられている。もちろん、この取引高は現物の引渡しを反映するものではない。シカゴ取引所で実際に引き渡しが行われるのは、先物契約の二%以下である」(143ページ)


「穀物市場で買い占めを行うのは、「空の星を買い占めるくらい難しい」といわれており、商品取引所での先物投機では大型投機集団が出現したといっても、完全に市場を支配したという事例は、それほど多くはない。穀物メジャーといえども、国際穀物相場を思うように左右することは不可能である。」(160ページ)


だいたい、現在では投機集団ではないが、ファンドがそれこそ星の数ほどたくさんあり、さまざまな思惑で動いている。(当然、買いからはいるファンドばかりではない。)強力な力を持つ穀物メジャーのいる穀物相場でさえ、上述の通りだ。


上に書いたように原油のいかに上昇が激しくても、原油は確実に消費されているのである。これはやはり、需要増(とそのさらなる増大の見込み)が原因であると言わざるを得ない。だいたい、中国や、BRICs諸国の経済での躍進を考えればわかるのではないだろうか?インドのタタ自動車に至っては、世界に衝撃を与えるような超低価格の自動車を市場に投入するのだ。


私のような海の物とも山の物ともわからない人間が何を言っても、信じられないのが人情というものだ。情報源を明示して統計に基づいて書いてもそれはかわらないだろう。そこで、次からは識者や政府関係者のコメントから検討したい。

 

投機マネーバッシングはきっと大局を見誤る(2)(http://bloquenote.blog.shinobi.jp/Entry/28/)



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