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ここ半年あまりの間にUFO問題について大きな動きが二つもあった。
ひとつは、日本で山根隆治参議院議員が提出した質問主意書に対する日本政府の回答。
もうひとつは、イギリス国防省がUFOに関する機密文書を情報公開したことだ。 


そのせいか、インターネットでUFOについての記述を見かけることが多くなってきた。(私がUFOについて検索するようになったからかもしれないが) 


UFOについては、多くの人がいろいろな見解を述べているし、見解がたくさんあっても別にかまわない。ただ、科学的にいうとなると、存在の確証がない以上、否定するのが妥当だと思う。 


しかし、それらの記述について、私には大いに不満がある。多くの人が間違った前提に立ってUFOとはなにかを論じていることだ。このことだけは正しておかなくてはならないと思う。以下に、いくつかの証拠に基づいてそれを書き留めておきたい。 


私が是正したいこととは「UFOとは未確認の飛行物体のことではない」ということだ。 


多くの人は、UFOとは「未確認飛行物体(Unidentified Flying Object)」であり、確認されていない飛行物体のことで、確認されるまでは気球だろうと雲だろうと航空機だろうとUFOであると思いこんでいる。 


しかし、これは間違いなのである。UFOとはいわゆる「空飛ぶ円盤」のみを指す言葉なのだ。(ただし、この「円盤」という言葉にも問題はある) 


■証拠1 ウィリアム・コールマンの著作 


かつてアメリカは公式にUFO問題を調査していた。秘密にせずに公然と調査していたのである。いくつかの改編を経て、1952年3月からプロジェクト・ブルーブックがその任にあたることになった。 


上に書いたウィリアム・コールマンとはそのプロジェクト・ブルーブックの「政府代表」として活躍した人物のことだ。 


彼の著作に「米空軍「UFO機密ファイル」の全貌」(中村省三・訳 グリーンアロー出版社 1990年)がある。この本は、もともとは月刊誌「トワイライトゾーン」に69回にわたって書かれた内容を彼自身が書き下ろしたものであり、米国でも単行本になっていないという。(「あとがきにかえて」より) 


ただ、原題が"I WAS A PROJECT BLUEBOOK CONSULTANT"となっており、彼を「政府代表」と呼ぶことが妥当なのか私にはわからない。 


この本には、アメリカにおけるUFO騒動の始まりと軍の調査機関の発足のいきさつ、そしてその権限についての記述に続いて次のように書かれている。 


「なお、"空飛ぶ円盤"という言葉はその後、次第に幅広い意味で用いられるようになっていった。高空でも低空でも何かわけのわからないものが飛んでいれば"空飛ぶ円盤"だし、さらには地上にある物体についてさえこう呼ぶようになった。そして、発光する球体が寝室に入り込んできたといった、まるで心霊現象まがいの出来事でも"空飛ぶ円盤"という言葉でひっくくってしまったのである。 このように、"空飛ぶ円盤"という言葉があまりにも曖昧になってしまったため、米空軍UFOプロジェクトの調査主任エドワード・ルッペルト大尉が、主として空中で起きた説明のつかない現象を指す用語として"UFO(未確認飛行物体)"という言葉を新たに考え出した。」(17ページ) 



現在では未確認飛行物体全般を指すものとしてUFOという言葉があると考えられがちであるが、実は現在とは逆に、「空飛ぶ円盤」という言葉が未確認飛行物体全般を指すようになってきたために新たにUFOという言葉がつくられたのである。「円盤」と限定しているわけではないが、国籍不明の航空機やミサイルは含んでいないのである。それは以下に示す証拠によってもっとはっきりすると思う。 


「円盤」と限定していないのは1947年のUFOブームの始まりからUFOの形状が「円盤」型とは限らず、(コールマン曰く)スペースシャトル型などさまざまな形状があったからである。 


次の証拠について述べる前に「空飛ぶ円盤」について述べておきたい。この言葉は、UFOブームの発端となった1947年のケネス・アーノルドの目撃談の中からマスコミが使い出した名前である。これは間違いない。 


しかし、Wikipediaなどに「ちなみに、アーノルドは未確認飛行物体の形状ではなくその飛び方を説明するためにSaucerという語を使ったのであるが、報道で「空飛ぶ円盤」という呼び方が定着して以降は円盤型のUFOの目撃例が多くなったのは注目すべき点であろう。」と書かれており、場合によってはケネス・アーノルド自身がブーメラン型のUFOのイラストを持っている写真が公開されている。 


だが、私が調査した結果ではこの写真が本物かどうかは不明だ。ケネス・アーノルドの「円盤型ではない」という証言にしてもいろいろ調べたが「CBSのインタビューで答えたらしい」という不確実な記述しか確認できなかった。 


少なくとも1970年代から90年代前半頃までの多くの日本のUFO本に書かれていない内容だ(全部調べたわけではないが)。もしかしたら円盤型でないというのは本当かもしれないが、さまざまな古い本にも載っているケネス・アーノルドの著書"The COMING of the SAUCERS"の表紙は円盤形のUFOが描かれているということははっきり書いておきたい。 


ついでに書くとWikipediaは便利だがたいへん評判が悪い。アメリカの大学教授にも批判されたことが朝日新聞HPにも書かれたし、日本でも民主党の細野豪志議員が道路特定財源の問題の時に国会では思いっきりWikipediaを叩いていたが、本当だと思う。 


上に引用したWikipediaの記述は本当におかしい。アーノルドの証言にはなかった「円盤型」のUFOの目撃証言が彼の証言の後に多くなったとあるが、多くなったのは目撃例ではない!目撃「証言」が増えたのだ!目撃例が増えるということと目撃証言が増えるということは全く違うことである。 


今まで、「円盤を見ても不思議な飛行物体が飛んでいると思っていなかった」人たちが、マスコミの報道により、今まで見ていたものを「不思議な飛行物体」と認識し、報告するようになっただけだとも考えられる。このWikipediaの記述は明らかに偏見に満ちている。(Wikipediaはこのように事実と個人的偏見の区別のつかない輩がとんちんかんなことをたくさん書いている) 


いずれにしろUFOの存否の判断には全く役に立たないし、影響されてはならないことだ。心理学や世論の研究テーマとして注目すべきとしても(オーソン・ウェルズのラジオ番組「火星人襲来」のように)、UFOの存否の問題で注目すべき点ではない。最大限、wikipediaに肯定的に書いてやったとしても、マスコミの報道後は、いい加減な証言が増えたということを意味するにすぎない。 


ちなみに、ウィリアム・コールマンも1954年にB-25爆撃機を操縦中に他の乗組員6人とともに400メートル以下の距離で完全な円形の航空物体を目撃したことがあると書いている。彼は、スカイフック気球や高層用観測気球がよく見慣れているものをも惑わせる代物だとよく知っている人物である。 


私がここで問題にしているのは「UFOは実在するかしないか」ではなく「UFOという言葉が何を指しているのか」ということであった。だいぶ脱線したがここらで次の証拠を示すことにする。 


■証拠2 AFR 200-2 


AFR 200-2とはアメリカ空軍規則(Air Force Regulation)200-2のことであり、この文書は情報公開法(FOIA Freedom of Information Act)によりアメリカ空軍のホームページから誰でも簡単に入手可能な公文書である。 


この文書はUFOを発見した場合の報告の仕方が定められている。文書の冒頭で用語の説明をおこなっている。長くなるので、おおざっぱに内容を述べる。 


a.既知の物体 


(1)航空機,気球,凧(観測気球),鳥,サーチライト,天体(流星,惑星,恒星,彗星),無人航空機,ミサイル,軌道上の衛星,観測者によって識別される通常の物体. 


(2)一般大衆にUFOとして報告されそうな未知の航空機もUFOに含まない 


(3)ジェット機の炎,排出ガス,空港近辺の光などの現象もUFOに含まれない 


b.UFO 大気中の現象や物体で観測者が通常のものとは思われないもの 


興味深いことに、既知の物体には「未知の航空機で一般大衆ならUFOとして報告しそうなもの」までAFR200-2のUFO報告には含まないとしている。戦略偵察機SR-71にしろその後継機といわれるオーロラにしろ新型機というのは従来の航空機からすると異形のものばかりだ。単なる国籍不明機だけではなく,このような未知の航空機さえもUFOの定義に含まないとしているのは驚くほかはない。これでは一体何を報告しろというのだろう。しかも、開発中の機体は機密のはず。空軍の中でも知っている人は少ないはずだ。 


上述のプロジェクト・ブルーブック「政府代表」ウィリアム・コールマンも「空軍が開発中の新型航空機のテストは、一般大衆に目撃されるような場所で行われるようなことは絶対にない。最終的に公開されるまでは、合衆国の中にある特別な立ち入り禁止の場所で飛行実験されることになっている。」(66ページ)と書いている。 


それでもなお,UFOとして報告すべきものを定めていることは全く不可解である。 


ひとつお詫びしたいのは、このAFR200-2(1962年版)ではUFOに未知の物体だけでなく現象も含めている点だ。UFO本によく見られる1954年版は現象を含めていない。しかし、この1954年版が本物であると私は確認できなかった。 



■証拠3 JANAP146( ) 


JANAP146( )とは陸海空軍共通公布(Joint Army Navy Air-Force Publication)146( )のことであり、重要な目撃情報の報告の手引きである。この文書は情報公開法(FOIA Freedom of Information Act)によりNSA(国家安全保障局)のホームページから誰でも簡単に入手可能な公文書である。( )内にはAだのCだのバージョンが入る。通常のUFO本ではC版が有名だが、情報公開で入手できるのものは( )内がブランクになっている。しかし、入手した文書はカナダも含められており、1966年のE版ではないかと思われる。 


この文書にはやはり報告すべき事項と報告すべきでない事項が記載されている。報告すべき事項に、独立した項目としてUFOが記載されている。そして報告したUFO情報については通信法の適用を受けるということである。 


実は、たいていのUFO本にはこの文書に付随してMERINT(商船情報)のパンフレットが掲載されている。民間人にもUFO(それ以外もあるが)の報告義務があったらしい。このパンフレットには、UFOの例として円盤型UFOのイラストまで描かれているのである。重要なものだと思うが、情報公開されている文書の中には私は発見できなかった。 


インターネットで調べたところ、「UFO & SPACE」No.44 1979年3月号の記事にフォンケビッキー氏が国連総会で発表した文書があり、どうもこの中に含まれていたようだ。この記事には、情報公開法などで合法的に入手した文書を暴露したとあるが私は本物かどうか確認することができなかった。 



(補足) 


ところで、これらの文書にはひとつ問題がある。 


アメリカにおけるUFO調査の歴史は、1969年のコンドン委員会による検討の結果、「UFOは存在しない」との結論にいたり、同年12月17日ブルーブックは閉鎖される。
上述の公文書はすべてそれ以前のものだ。 


それまでは、「UFOが存在するかもしれない」という前提であったから、これらの文書が存在しても不思議はないということになる。ただそうすると、これ以降のUFO目撃報告は政府には存在しないはずなのである。UFOは存在せず、未知の新型航空機さえもUFOの定義に入らないからだ。 


しかし、インターネットで誰でも入手可能なDIA(国防情報局)の情報公開文書には、1970年3月7日報告、同年2月13日のUFO目撃報告文書をはじめ、70年代の世界のUFOの目撃報告書が多数存在しているのである。 


不思議というほかはない。



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